How to Grow Dyckia ディッキア・ヘクチア・エンコリリウムの育て方


はじめに

写真はオークションに出品したディッキアの子株です。色々な種を育ててみたいというご要望がありましたので出品しました。子株の出品に伴い、育て方のご質問を頂く事が多くなりましたので、育成方法を本稿にまとめたいと思います。なお、情報の少ない中、愛好家の方々が育成方法をブログ等で公開されています。まずは、先輩方の取り組みに感謝しつつ、これからご紹介する育成方法は一部独自のやり方を採用している箇所もありますが、他のやり方を否定するものではありませんので、ご理解ください。

ディッキア・ヘクチア・エンコリリウムの自生地

これらの属はグランドブロメリアの中でも乾燥地帯に自生しています。(厳密には他にもありますが割愛します。)これらについては、大枠では同じような管理方法で問題ないと考えていますので、本稿ではひとつにまとめて記載します。
これらの自生地は中南米の平地~山岳地帯です。かなり高い標高でも確認されており、ゴツゴツした岩や砂利の混ざった土に根を下ろし、へばり付くように自生しています。日光を遮るものは少なく、直射日光が降り注ぎ、かなり乾燥する環境ですが、その一方で霧や豪雨も多く、一時的に加湿になることもあります。このような環境に自生するディッキア・ヘクチア・エンコリリウムは強い日光を好み、乾燥に強く、湿度にもある程度の耐性があります。



岩の多い斜面に自生するディッキア
写真提供:Dyckia Brazil


川辺に群生するディッキア
写真提供:Dyckia Brazil


花芽を上げる浜辺のディッキア
写真提供:Dyckia Brazil

育成環境

以下、私が採用している方法です。ベアルート苗の管理方法については、次項の「ベアルート苗について」に記載しておりますので、併せてそちらもご参照ください。
・陽射し…「直射日光」 強い日差しで育てると引き締まった綺麗な形に育ちます。
・水やり…「週1回程度」 基本に忠実に鉢底から水が流れ出すくらいたっぷりと。夏場は乾き具合を見ながら2回程に増やしてもよいです。
・鉢…「硬質ポリポット」  もちろん、他のものでも問題ありません。詳しくは事項の用土に記載します。
・用土…「赤玉1:軽石1+腐葉土少々」 赤玉中粒と軽石中粒を1:1の割合で配合し、全体の1割以下の量の腐葉土を加えています。私はポリポットのように水を吸わない鉢を使うので、用土はかなり乾きやすい配合にしています。焼き物の植木鉢など用土が乾きやすい鉢を使う場合は、腐葉土を少し増やして調整してください。赤玉土はちょっと高価ですが、硬質のものがオススメです。


用土のイメージ

・肥料…「固形肥料を1~2個」 多すぎると間延びするので、後から量を調整できる置き肥が便利です。用土に隠れない大粒の方が量を確認しやすいのでオススメです。
・冬季…「10度を下回ると成長が滞ります」 凍結するような環境でなければ野外での越冬も可能ではありますが、ある程度のダメージは覚悟しておく必要があります。スペースに余裕があれば室内での管理をオススメします。

ベアルート苗について

多くの輸入苗はベアルートの状態で入荷します。検疫の際に土が付いていない状態にしておく必要があるため、用土を掴んでいる根は切断されることがほとんどです。ベアルート苗については通常とは管理方法が異なりますので、ご注意ください。
・日差し…「日陰」 基本的に陽の当たらないところに置いて発根を待ちます。根が少ない状態だと吸上げる水も少ないため、強い光を当てると葉が萎れてしまうことがあります。しっかりと根を張ってから日向に移してください。
・水やり…「週2回程度」 通常の管理よりもやや多めに与えてください。
・鉢…「硬質ポリポット」 通常の管理と同じです。
・用土…「赤玉1:軽石1+腐葉土」 通常の管理と同じです。
・肥料…「不要」 根を張るまで肥料は必要ありません。
・冬季…「出来るだけ暖かい環境」 まずは発根させることが優先なので、20度を下回ったら室内に移してください。発根するまでは日当たりよりも温度を優先してください。

FAQ

ご参考までに落札者の皆さまから頂いたご質問内容と回答を記載しておきます。
Q:発根するまで水に浸けておいた方が良いですか?
A:稀に苗が痛むことがあるため、私は水に浸ける発根方法は行いません。ブロメリアではメジャーなやり方ですので一定の効果はあると思いますが、土に植えて発根を待つ方法でも十分かと思います。
Q:ベアルートの古い根は切った方が良いですか?
A:私は切らないです。理由は二つあります。ひとつは一見すると枯れているように見える古い根でもその先から新しい根を出すことがあるからです。もうひとつは新しい根が張るまで苗を安定させる為にあった方が良いからです。棘を引っ掛けて鉢から引き抜いてしまう、といった事故を多少でも防げた方が良いので、古い根も残すようにしています。


黒くなった古い根の先からの発根

Q:普通の観葉植物の土でも育ちますか?
A:育ちますが、栄養と水分が多いため少々間延びした容姿になる可能性があります。軽石等、栄養が少なく、水はけの良い用土が余っていれば混ぜてお使いください。
Q:赤玉土の代わりに鹿沼土を使っても大丈夫ですか?
A:問題ありません。私も一部で鹿沼土を使っています。最適なphについては未検証ですが、それほど極端な差は出ないと考えています。
Q:室内でも育ちますか?
A:室内でも育てることは可能ですが、日差しが足りず徒長すると思いますので、出来るだけ陽のあたる場所に置いてあげてください。
Q:育てているうちに色が変わってきました。
A:季節によって色合いが変わってきます。具体的には気温、水の量、光の強さで色合いが変化します。一般的には水は少なく、光は強めの方が綺麗になると言われています。
Q:腰水でも育ちますか?
A:水辺に自生する種もあるようですので、種によっては育つと思います。しかし、綺麗に育てるのは難しいと思いますのでオススメはしません。どちらかと言うと上級者向けの方法かと思います。

おわりに

育成環境について、光は直射日光、水と肥料は少な目が定番となっていますが、用土については人によって結構違う印象があります。それだけに落札者の方からも用土に関するご質問がとても多いです。私自身も色々試しておりますが、最近では富士砂のブレンドが妙に根張りが良いような気がしたりと、まだまだ試行錯誤は続きそうです。


富士砂は根張りが良い(気がする)

植物の育成については属に対してはある程度整理されていても、種による好みや、育成者自身の癖が出るので教科書通りにやっても上手くいかないことも多いと思います。(ちなみに私は水遣りが大好きなので控えるよう心掛けております…。)今回、紹介させて頂いた内容を一例として自由にアレンジして頂き、ご自身にあった育成方法を見つけてください。その為に本稿が少しでもお役に立てれば幸いです。最後になりましたが、本稿の作成にあたり自生地の写真をご提供頂いたConstantino Gastaldi氏に感謝申し上げます。